空気圧 イントロダクション
空気圧は、機械を動かす為のエネルギー源として工場では最も多く使用されています。
空気圧以外の動力源としては、電気、内燃機関用燃料(軽油など)がありますが、空気圧がもっとも簡易的に機械を動作させることができ、クリーンに使用できます。
空気圧の理論を理解できれば、油圧の理論もすんなり理解できます。
空気圧を使用するための回路図までは、通常 機械設計の分野に含まれます。
空気圧とは
絶対圧力とゲージ圧力
空気の圧力を表すのに、どこを基準とするかによって絶対圧力とゲージ圧力の区別があ る。
絶対圧力は完全真空を0として、そこからの圧力を表す場合のもので、[MPa abs] と表示する。
ゲージ圧力は、ブルドン管圧力計で圧力を測定するように、大気圧を0としてそこから 圧力を表すもので、[MPaG]と表示する。
ゲージ圧力と絶対圧力の関係は次のようになる。
絶対圧力 P[MPa abs] = ゲージ圧力 P'[MPa G]+大気圧 0.1MPa
早い話が 普通の生活している大気圧を"0"とするのがゲージ圧力と言うことです。
工場供給圧力
日本の工場の供給圧力は、通常0.5MPa (約5kg/cm2)であるが、設計段階においては、圧力降下を 見込んで、0.45MPaで対応するのが普通である。
詳細は各仕様書に明記されているので、それに従うことが最優先である。
空気の圧力・温度・体積の関係
気体の状態は、気体の圧力、体積、温度によって関連して変化する。
圧力は絶対圧力、温度(T)は 絶対温度(-273°C)を示す。
1)パスカルの原理
パスカルにより密閉された容器内の圧力はすべての方向に均等に作用する事が証明され、 このことから F = P X A という式が導き出される。
この計算式はシリンダの出力計算に使 用される。
Pゲージ圧力〔MPa G〕、 A 面積〔mm2〕、 F 力 〔N〕 P X A = F
2)ボイル・シヤールの法則
体積・温度・圧力の関係を表す。 空気は、圧力が高くなると体積は反比例して小さくな り、温度が上がると比例的に大きくなる性質をもつ。
P絶対圧力〔MPaabs〕、 V体積〔m3〕、 T絶対温度〔k=t‐+273°C〕、 G気体の質量〔kg〕、 Rガス定数〔J/kg・k〕 ※空気の場合287
空気の標準状態
標準空気は温度20°C、絶対圧力0.1MPa(=大気圧)、相対湿度65%の湿り空気を標準の状態という。 空気圧システムでは圧縮空気の量を上記の標準空気の状態(標準状態)に換算した体積で示す。
これをJISでは、空気量・空気流量の単位の後に(ANR)と明示することを規定している。
例 L / min(ANR) 容積 V[L]の容器に充填した圧力P、温度 tの圧縮空気の量は、次式のように空気の標準体積 Q[L(ANR)]で把握する。
空気の状態変化
気体が圧縮や膨張によりその状態を変えることを状態変化という。
空気圧システムにおける圧縮空気は状態変化に伴う温度変化に注意する必要がある。
気体の状態変化の様子は一般的にポリトロープ変化と呼ばれ、次式のように表される。 n はポリトロープ指数といい、添え字1は変化前、添え字2は変化後を表す。
注)圧力は絶対圧力である。
ここで n = 1 の場合を等温変化といい、温度を一定に保ちつつ状態変化させた場合であり、変化の速度が充分遅く、周囲との熱交換によって温度が一定になる場合に相当する。 また n = k (比熱比) = 1.4(空気)の場合は断熱変化といい、周囲との熱交換がない場合であり、状態変化が急激な場合にもこれに近づく。
圧縮空気は、ポリトロープ指数 1 < n < 1.4 の範囲で状態変化し、それにともない温度を変化させる
。 空気圧縮機においては断熱圧縮により圧縮空気が高温になる。
またシリンダに圧縮空気が充填されるとき、特に外部負荷によって強制的に圧縮を受ける場合などには温度上昇が発生する。
また、空気タンクやエアシリンダから急速に排気される場合には、断熱膨張によって温 度を降下させる。
例1 温度20°C、圧力 0.5MPa の圧縮空気が急激に大気圧まで膨張すると、その温度はどうなるか?
となります。