軸受け
軸受けには大きく2種類あります。
一つは転がり軸受け、ベアリングのことで す。
もう一つは 滑り軸受けです。 これは軸よりも柔らかい材料で受ける物、または軸受け面に皮膜コーティングをして摩擦を減らす物があります。
この軸受けを受ける箱のことをハウジングと言います。
滑り軸受けのこともベアリングと呼びます。 軸受け = 転がり軸受けと考えがちですが 実際は滑り軸上の方が使用頻度は高いです
選ばれる理由として
1,構造が簡単、安価
2,密封装置、防塵対策などが不要な場合が多い
3,公差など設計上考慮する箇所が少ない
4,メンテナンスがほとんど不要
5,転がり軸受けでは受けられない条件でも受けられる
6,揺動運動で高負荷の箇所は転がり軸受けではボールが回転しないので同じ点ばかりが接触し耐えられない 。
滑り軸受け
滑り軸受けの種類も多くありますが 形状的分類には大きく分け2種類あります。
1,薄肉でスリットの入ったタイプ
このタイプが一番安価です。 スラスト運動には使用できません。
ハウジングから取り出して再利用もほとんどできません。
軸受け部にコーティング材が塗ってありそのコーティング材が剥離すると軸受けとしての機 能も失われる。
2,厚肉タイプ
材質そのものが軸受けの機能を発揮するタイプ
右左のタイプは潤滑油を含有した樹脂をちりばめてあり潤滑油が無くても軸受けとして使用できる。
大きさにもよるが価格は使用量の多い部類の転がり軸受けとほぼ同額、もしくは若干 高いくらいである。(以外と高い)
スラスト運動にも適用可能である。 その場合 軸受けそのものが抜けないような押さえカバーなどが必要である。
簡易的にセットスクリューだけで留める場合もある。
オイレスブッシュには、軸方向、回転方向両方受けられるものと、回転方向だけ受けられるものがあるので用途に応じて使い分けること。
滑り軸受の許容荷重の求め方
各製品で許容PV値というものが決められているので右のグラフの範囲内で使用する。
面圧の計算方法は、以下で行う
材質での分類すると 樹脂系、金属系に分けられます。
樹脂系は主に食品、薬品など油を嫌う箇所、耐薬品性能を期待される箇所に使用されます。
転がり軸受け
転がり軸受けの最大の特徴は、
1,摩擦が小さい
2,保持精度が良い
この2大 特徴は非常に重要です。
滑り軸受けではこの要件は満たせません。 転がり軸受けはきっちり使用しようと思うと非常に難しい物があります。
重要部品でなく、故障してもそれほど影響がなく安価に作れた方がいいという場合も多くあり(おもちゃなど)それらの場合は 本当に簡易的に使用することもできます。
しかしそれらはあくまでも簡易的であり 重要部品を設計する際には十分な検討を必要とします。
転がり軸受けの使用方法、呼びなどは ここで説明するより メーカーの資料をみていただいた方がよくわかると思います。非常に詳しく説明されています。
NTN株式会社の転がり軸受けのWEBアドレスを参考に載せておきます。
技術情報アドレス http://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/rolling/index.html
軸受け技術計算プログラムは、ここから ダウンロードできます。 http://www.ntn.co.jp/japan/products/techprg/index.html
手計算でも一度、試してみることをおすすめします。 Excel dataの参考を示します。
ここでは補足的なことに重点をおいて説明していきます。
転がり軸受けは 深溝玉軸受けがもっとも一般的で性能も優れており価格も一番 安価なので これで適用できない箇所に限り他のタイプを使用するようにしましょう。
よく深溝はスラスト(アキシアル)負荷を受けられないか、もしくはほとんど受けられないと思っている人が多いのにはびっくりします。
一つにはアキシアル荷重をどのくらいまで受けられるかがカタログにそのものずばりが載っていないことが大きな理由ではないかと考えています。
ラジアル荷重に対する比率を計算しないと許容値がでないため、計算が面倒で使わないでおこうと言うことでしょうか? カタログ上も下のようにしっかり適応可能とでています。
軸受けのハウジング加工公差
ベアリングのハウジング公差は一律ではありません。 "製図-公差について"では 参考図をみてならうのが一番と書きましたが、ことベアリングに関しては下の表をみてどの部類に入るのかを理解した上でカタログ推奨値を適用するようにしましょう。
軸受けのシール
シールに関してはカタログに左下記のような種類の説明がありますがこれは ベアリング単体にグリースを噴入して使用する場合の物で外部から潤滑油を補充する場合は 当然 両側シールでは 不都合が生じます。
カタログ説明からは 良く理解できませんが 片側シールと言うのも存在します。 ZZ型は 片側のZをはずして ただの Zを付加記号としてつけます。
ベアリング許容荷重の見方
たとえば、深溝ベアリング6006で スラスト荷重 Fa=50kgf、ラジアル荷重 Fr=250kgfで設定した場合
、6006の値 f0=14.7、C0r=845kgfを読み取り カタログの右下に示す表から(カタログに各ベアリングごとに載っています)から f0Fa/C0r=0.86 ⇒e=0.27 Fa/ Fr=0.2<e=0.27 ⇒ X=1 Y=0 という結果を導きます。
これから、この使用条件では、スラスト荷重係数をかけなくてもよいことがわかります。
係数が必要となった場合この表の係数をかけて許容荷重を確認します。
ベアリング組付の注意事項
一般に軸は2つのベアリングで支持されます。
ベアリングの配列を考える場合は、次のことに考慮します。
シャフトに加わる力がベアリングを介して固定側BRKTで受け止められる構造にします。
シャフトが熱を持つ可能性がある場合
(高速で回転する場合など)
軸が熱で膨張をして伸びるのを吸収できる構造にしておく必要があります。 右のように軸端をフリーにします。
アンギュラ玉軸受
アンギュラを使用する理由は、スラスト方向でガタが出ては困る場合多くはボールネジなどを使った位置決め装置などです。
原則として2個を軸方向に適当な力でセラして(プリロードという)使う。
昔は軸受の出ベソ(図4)の量がまちまちだったから、それぞれの出ベソ量を実測し、それに応じ、さらに接触角からプリロード量に対する軸方向の変位量をグラフから求めて、2個のベアリングの内輪間および外輪閲に挿入するリングを、高さを変えて作っていました。
今では生産技術が向上し、所望のプリロード量に応じて、2個1組の出ベソ量を設定したものが市販されています。
図5のように組みつけて締め上げれば既定のプリロードが得られます
。
ベアリングの給油
まず、ベアリング自体へのグリースの充填方法です。
以下NTNの解説より グリ-スの充填量はハウジングの設計,空間容積,回転速度,グリ-スの種類などによって異なる。 充填量の目安は,軸受へは空間容積の30~40%,ハウジングへは空間容積の30~60%とする。 回転速度の高い場合や温度上昇を低く抑えたいときには少なめにする。
グリ-ス充填量が多過ぎると温度上昇が大きくなり,グリ-スの軟化による漏れ,又は酸化などの変質によってグリ-スの潤滑性能の低下を招く。
技術資料より上記の使用方法がうたわれているので、自動給油で継ぎ足していく方法は、間違いということです。 では、どうすればよいかというと 分解して洗浄、再充填しかないということです。
しかし、これはあまりにも現実離れした方法です。 しかも、ピローブロック、カムフォロアーにはグリスニップル付きが用意されています。
おそらく 高速回転で使用しないものの場合は 空間容積を超えても新しいグリースを追加充填した方が寿命への影響は良いのだろうと勝手に推測していましたが、 NTNへ問い合わせしてみました。 以下 NTNへの質問および回答です。
質問
> 技術資料より上記の使用方法がうたわれているので、自動給油で継ぎ足していく方法は、間違いということですか?
> では、どうすればよいかというと 分解して洗浄、再充填しかないということでしょうか?
> しかし、これはあまりにも現実離れした方法だと思います。自動車工場など大量に使用しているところではできません。
>
しかも、ピローブロック、カムフォロアーにはグリスニップル付きが用意されいてこちらを使用するようにと指示があります。
> おそらく 高速回転で使用しないものの場合は 空間容積を超えても新しいグリースを追加充填した方が寿命への影響は良いのだろうと勝手に 推測していますが、 本当のところはどうなのでしょうか?
回答
1)本来は軸受を分解洗浄してグリース再封入する方が良いと考えますが、ご提示されていますように多大な工数がかかり対応できないのが現状です。そのための代用として途中給脂してグリースを置き換えをしています。 途中給脂では封入量が多くなりますが、古いグリースを使い続けるよりは軸受にはベターであるとの考えより行って頂いています。
2)新しいグリースを補給した場合には、軸受内部から古いグリースは排出されます。排出された古いグリースは軸受箱内の空間に溜まってきますので、排出口を設けて頂きこれより外部に排出していきます。
3)グリース補給を数多く行った場合には、古いグリースが軸受箱内部に多く溜まっていきますので軸受箱の分解等を行って頂き、古いグリースの除去を行えばグリースの交換はスムーズになります。
4)グリース補給された時の軸受本体の過剰なグリースについては、回転とともにある程度軸受周辺に排出していきますので、通常の回転時ではグリースの影響は無いと考えます。 ご参考にして下さい。
よろしくお願い致します。
NTN㈱ 名古屋支社 営業技術G Mさん
ということで、やはり右のように廃油用穴を施工するのが一番よい方法のようです。
グリスついでで、種類について調べていくうちに、 二硫化モリブデングリースは、ベアリングには使用不可、固体粉末を含んでいるのでベアリング自体が摩耗してしまうとのこと。
へ~?? 先日 私のホビーマシンの主軸に塗ってしまった。
高級グリースとのうたい文句によく考えもせず塗ってしまったものだ、とても設計者とは思えぬ所業 深く反省。
あわてて 再分解して 洗浄 ホワイトグリスを塗りなおしました。 たかがグリス、されどグリスです。
NTNの技術解説です。
スピンドルなどの精密軸受けの軸、ハウジングの設計にご利用ください。
スピンドルなどの精密軸受けの軸、ハウジングの設計にご利用ください。
玉軸受けの製図
今は各メーカーよりCAD DATAが配布されるので問題は無くなりましたが 以前は 良く内輪と外輪のリングの厚みがわからなくて 内輪押さえをいくつにすれば良いのか、あまり大きくしすぎると外輪に接触してしまうので悩みました。
参考に製図の方法を載せておきます。 私は製図の本を選ぶときにこの転がり軸受けの書き方が載っているかどうかを一つの基準として選んでいます。
その他の注意事項
ベアリングで接続されている機械で大容量の電気を扱う機械の場合 絶縁に不具合が生じたときにまれに軸受けの玉でスパークが発生し軸受けを破損するおそれがある。そのような懸念がある場合は 別途 アース線をもうけておくことを推奨します。