金属材料の呼び方
個々の材料は原則として次の3つの記号・数値から規定されています。
①材質
②製品名
③材料
の最低引張強さまたは種類番号の数字
これにより各種材料を一意的に特定することができます。これは、逆に考えれば名称から材質や 製品名、引張強さを読み取ることができることになります。
SS400を例にすると
1文字目の“S”は材質を示し、この場合Steel(鋼)を意味しています。このほか、“F”の場合は 鉄(Ferrum)、“A”の場合はアルミニウム(Aluminum)を意味します。
2文字目の“S”は製品名を示し、この場合Structual(一般構造用圧延材)を意味します。
このほか、“US”の場合はステンレス(Stainless)、“P”の場合は薄板(Plate)を意味します。
3文字目の“400”は材料の最低引張強さ(または種類番号の数字)を示し、この場合、
最低引張強さが400〔N/mm2〕であることを意味しています。
鉄鋼材料についての最初2文字の記号(主なもの)
例 ①SM490:「最低引張強さ490N/mm2以上」の「溶接構造用鋼」
②SC450:「最低引張強さ450N/mm2以上」の「炭素鋼鋳鋼」
③SUS304:「種類番号304」の「ステンレス鋼」
④FC250:「最低引張強さ250N/mm2以上」の「ねずみ鋳鉄」
末尾に「形状」や「製造方法」、「熱処理」の過程を示す。
例 SM570Q:「最低引張強さ570N/mm2以上の「焼入れ・焼き戻し」「溶接構造用鋼」
SS材 一般構造用圧延鋼
リムド鋼(気泡が残っている)、
安く大量にできる。
引っ張り強さだけ保障されており成分に規定はない。
熱処理をしない。
SM材 溶接構造用圧延鋼
キルド鋼(気泡は残っていない)
船舶に用いる鋼材の溶接性を高める目的で開発された鉄鋼材料で、MはMarineの頭文字からきています。
中・低温用の鋼板で、化学成分はSS材とよく似ていますが、低温じん性を改善し、保証したタイプもあります。
低温側は-10℃、高温側の使用限界温度は350℃です。
形状は鋼板、鋼帯、形鋼、平鋼がある。
S-C材 機械構造用炭素鋼
キルド鋼(気泡は残っていない)
C%のみによって硬くなる。
0.6%以上になると硬さは変わらずSK材と呼ばれる
SCM材 クロムモリブデン鋼
焼き入れ性を保証した構造用鋼材、
焼きが深く入るのが焼き入れ性
SCM440はズブ焼き鋼、SCM415は浸炭焼き入れ鋼
SK材 炭素工具鋼
S-C材でCが0.6%以上のもの、耐摩耗性がある鋼材
熱に弱い、さびやすい、衝撃に弱い、安価
SKS材 合金工具鋼
炭素工具鋼にタングステン、モリブデン、クロム、シリコン、バナジウム、ニッケルを加えて、耐衝撃、耐摩耗を向上させたもの
SKD材 ダイス鋼
焼き入れ温度が1000度、真空焼き入れが行われる。
焼き入れによる変形が少ないためゲージ、ダイスに適している
SUJ材 高炭素クロム軸受鋼
耐摩耗用鋼材として優秀
焼き戻し温度が160~180°と低いので高温では使用できない。
SK5にCrが1%入ったもの SK5より安い、ただし丸棒しかない。
SUP材
ばね鋼鋼材熱間成型用と冷間成型用に分かれる。
分類 | 種類 | 材質記号 | 熱処理 | |
熱間成型ばね | 重ね板ばね | 炭素鋼 | SUP3 | 焼き入れ焼き戻し |
特殊鋼 | SUP6, 7, 9, 10, 11 | |||
コイルばね | 炭素鋼 | SUP4 | ||
特殊鋼 | SUP6, 7, 9, 10, 11 | |||
冷間成型ばね | 線ばね | 硬鋼線 | SWB, C | 低温焼きなまし |
ピアノ線 | SWPA, B | |||
オイルテンパ線 | SWO-A, B | |||
弁ばね線 | SWPV, SWO-V, SWOCV-V, SWOSC-V | |||
ステンレス線鋼 | SUS302, 304, 316, 631J1-WP | |||
薄板ばね | 磨き特殊帯鋼 | 炭素鋼 S50~82CM, 工具鋼 SK2~7 | 焼き入れ焼き戻し | |
ばね鋼 SUP6, 9, 10 | ||||
ステンレス帯鋼 | SUS301, 304, 420J2, 631-CSP |
FC材 鋳鉄
俗にいう鋳物のこと、鋼に比べてもろい、伸びない、摩耗に強い
溶融点が低い(1400°)、冷却時の収縮が少ないので鋳造性がよい。
種類により熱処理ができるものがある。
振動の伝播を減衰する 性質を持っている。(ネズミ鋳鉄)
FC ネズミ鋳鉄
破面がねずみ色のためネズミ鋳鋼と呼ばれる。
安価であるので一番使われている。
FCD 球状黒鉛鋳鉄
ねずみ鋳鉄品に含有する黒鉛が片状なのに対し、黒鉛そのものが球状化していて、よく滑り、耐摩耗性を上げたもの。