材料特性
なぜ材料特性が必要か? どのような種類に分かれるのか?
という観点からかかれている書籍はほとんど見受けられません。
実際に応用設計をしている段階ではほとんど気にする機会もなく実績のあるものを選ぶことが多いと思います。
S45CとS55Cを使い分ける必要があるか? ということも深く考えずに前と同じにしてしまう人も多くいるのではないでしょうか?
特性がなぜ必要かと言えば考案した物が 本当に成立するのかしないのか?
聞いた話ではガンダムの実物大のものは決して動くことはできないと言うことです。
実物大の形はできるが動けないとのこと。
それはそうかもしれません。30mの鉄でできたビルが動くとはちょっと想像できません。
自分の重さを耐えるだけで精一杯でしょう。
このように成立する、しないは、なにから判断するかと言えば 1,強さ、2,重さ です。
この2大要素は非常に重要です。
金属材料の項でも述べていますが、変形のしやすさも重要な特性です。
機械では大きな特性にはあまりなりませんが電気関係では当然 伝導性という物が重要な特性になります。
すなわち作ろうとしている物に対して求められる要求がそれぞれ違い その要求にたいしてもっとも優れた材料を選び出すために材料特性を理解する必要があると言うことです。
あまり難しく考えず日常生活で触れることのできる物体のことを考えてみましょう。
工作があまり好きでないと言う人も木材のことならば少しくらいのことはわかると思います。
まず、木でイスを作ると仮定します。 木でなくてもいいのですが一番身近な材料と思います。まず、あなたなら なにから始めますか?
そうですね材料の切断からです。 足なら足の形に、背もたれなら背もたれの大まかな形に切断します。 その後にかんなをかけて細かな形状に削り出していきます。
次は各部品を組み立てていきます。 釘を使うかもしれないですし はめ込みだけの部分もあるかもしれません。 接着剤を使うかもしれません。 最後に塗装をしますね。
さあ、できあがったイスは人が座っても壊れませんか? 人が持って動かせますか? 当たり前ですか?
なぜ当たり前って言えるのでしょうか? では、材料を木でなく こんにゃくで作ってみましょうか、人が座れますか? 金で作ってみましょうか? さあ、人が一人で動かせるでしょうか?
5Kgの木のイスを金で作ったとしたら193Kgになります。 こんにゃくのイスには当然 座りませんね。 これが材料特性を考えると言うことです。
上の例の中にも考えなければならない材料特性が何点かでてきました。 重さ(比重)、強さ、切断性、切削性、接合性などです。
金属材料が優れている点はこの材料特性に ばらつきが少なく、設計者が期待した能力をほぼ保証できるということが機械部品材料に多く使用されておる理由です。
木ですと どうしても品質均一という点からあまり狭い範囲で設定することは難しいのです。
このイスには100Kgまでは大丈夫だけど150Kgはだめですとはなかなか範囲を絞ることができないのです。
材料特性の必要性について おおざっぱではありますが理解できたでしょうか? もう少し材料に求められる特性を細かくした特性を下記に示します。
機械材料特性一覧表
材質 | 弾牲係数〔kg/cm3〕 ヤング率 |
破断応力〔kg/mm2〕 | ボアソン比 ν |
降伏点 | |||
横(G) | たて(E) | 引張り | 圧縮 | せん断 | (Kg/mm2) | ||
SS400 | 7.9 | 20.6 | 41 | 0.3 | 24 | ||
S20C | 8.1 | 20.5 | 41 | 0.3 | 25 | ||
S45C | 8.1 | 20.5 | 58 | 0.3 | 35 | ||
70 | 0.3 | 50 | |||||
SCM440 | - | - | 100 | 85 | |||
SGP | 20.6 | 30 | - | ||||
STK400 | 41 | 25 | |||||
SPCC | 20.6 | 28 | - | ||||
SUS304 | 7 | 19 | 53 | 0.3 | 21 | ||
SUS430 | 7 | 19 | 46 | 0.3 | 21 | ||
鋳鋼 | 8.3 | 21.5 | 53 | 53 | 53 | 0.28~0.3 | - |
鋳鉄 | 5.3 | 9.5 | 18 | 75 | 75 | 0.2~0.29 | - |
ニッケル鋼(Ni 2~3%) | 8.4 | 20.9 | 60 | 60 | 60 | - | - |
銅 | 4.7 | 12.5 | 20 | 30 | 30 | 0.34 | - |
リン青銅 | 4.3 | 13.4 | 40 | 38 | - | - | |
砲金 | 4 | 9.5 | 24 | 24 | 24 | - | - |
黄銅 (7 3) | 4.2 | 11.3 | 26 | - | - | - | |
黄銅 (6 4) | 4 | 9.3 | - | - | - | - | |
アルミニウム(A1085P) | 2.7 | 7.2 | 9.5 | - | 0.34 | 2 | |
ジュラルミン(A7075P) | 2.7 | 7 | 45 | - | 0.34 | 52 |
いきなり難しそうな単位がでてきました。
漢字が難しいだけですので一つ一つ理解しましょう。
上の表からもわかるとおり金属は金属でない物質に比べてずいぶん重いですね。
アルミは金属の中でもっとも軽くアルミの化合物ジュラルミンが飛行機の材料として使用されます。
比重、融点は字の通りですので説明はいらないと思います。
縦弾性係数、引っ張り強さ、降伏点は下記グラフのa点~0までの間の比、e点, c点のことです。
金属は特性が細かく要求されるのでいろいろな試験方法が確立されています。
上の表の中では引っ張り強さというのがありますね? これは文字通り 材料を引っ張ったらどうなるかという実験を行いちぎれるまでの強さを示します。
これらのことは後で材料力学にもでてきますので覚えておいてください。
この試験で得られたDATAをグラフ化したのが右のです。 材料によってこの のび方に特色がでてきます。Aが鋳鉄、Bが鉄(硬鋼)、Cがアルミなどの特色を表しています。 B線図はもっとも よく説明に使われる線図でa点を比例限度点、(正比例で変化する範囲)、 bを弾性限度点(加えた力を取り除くと元の0の位置まで戻る限界点)、 c点を降伏点(ここを越えると力を増加させなくてもひずみが増えていく)、d点に達すると応力の増加に伴いいちじるしくひずみが大きくなる、e点を引っ張り強さとしている。 このことから材料は決して引っ張り強さまで使用していけないことが理解できる。 a点までの比例限度点までの範囲内においては物体内に生じる応力とひずみは比例するー>フックの法則といいます。 縦弾性係数とは、引張・圧縮時の応力とひずみの比を表すものです。縦弾性係数は、ヤング率とも呼ばれます。下にポアソン比と併せて定義を示します。
二つが決まると他の値は、決まります。 関係を示します。
G(横弾性係数)=E(縦弾性係数)/(2(1+ν(ポアソン比))
E=2G(1+ν)
E = σ/ ε 金属の材料特性は上記以外にも焼き入れ性、摩耗性、防錆性を考慮しなければなりません。
金属材料物理的性質pdf